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相続における遺留分とは?法定相続分との違い
相続の際には、遺言書があれば基本的に遺言書に沿って相続が行われますが、家族の一人に全ての遺産を相続させるなど不公平な内容があった時、金銭面でその後の生活が左右される方もいらっしゃいます。
そういった場合に相続人が最低限の相続財産を守る権利として「遺留分」があります。
今回は、相続時の遺留分について、目的から計算方法まで解説します。
□相続における遺留分とは?
遺留分とは、被相続人が遺した財産の中で、特定の相続人が最低限受け取ることが保証された財産の割合を指します。
遺留分は、相続人の生活の保護と、被相続人の意志を尊重するという2つの側面を持っています。
*遺留分の目的と役割
遺留分制度の目的は、被相続人の遺言の自由と相続人の生活保障のバランスを取ることです。
例えば、被相続人が全財産を非親族に遺贈する遺言を残した場合でも、配偶者や子、直系の相続人が生活に困窮することを防ぐために、一定の割合の財産が保証されるのです。
これにより被相続人は自身の意志で財産の分配を決定できる一方で、相続人は最低限度の財産を守ることができます。
*遺留分の対象者
遺留分を請求できる権利のある人は、配偶者、子ども、父母などの直系尊属に限られます。
兄弟姉妹にはこの権利が認められていないため、遺留分の申し立てはできません。
また、遺された相続人の生活を保障するという遺留分の目的に合わないことも考えられるため、法律で遺留分の割合は定められています。
これは遺言書でも侵害することはできません。
遺言書による相続が遺留分で保証される範囲を下回った場合は、遺留分侵害額請求を行使できます。
*法定相続分との違い
法定相続人とは遺言書がない場合などに、民法で定められている被相続人の財産を相続できる人のことです。
遺留分と法定相続分の違いは、法定相続人には被相続人の兄弟姉妹も含まれますが遺留分では請求する権利が認められてないこと、相続順位の有無や割合などが異なります。
*法改正による影響
2019年の法改正で、遺留分制度にいくつかの変更が加えられました。
特に重要なのは、遺留分の請求権が物的権利から金銭請求の権利へと変更された点で、相続財産が不動産をはじめとした現物であっても、遺留分侵害額は金銭での請求が基本となりました。
これは、相続におけるトラブルの解決を容易にし、相続手続きの煩雑さを軽減する目的があります。
□遺留分の計算方法
遺留分の計算は、生活が左右される相続人にとって重要なポイントです。
1:遺留分の割合
遺留分の割合は、基本的に「法定相続分の半分」と定められています。
例えば、配偶者と子どもが相続人の場合、配偶者の遺留分は法定相続分(2分の1)の半分、つまり全遺産の4分の1となります。
子どもの場合も同様に、法定相続分の半分が遺留分となります。
2:遺留分計算の手順
遺留分の計算には、まず「総体的遺留分」を算出し、その後に各相続人の「個別的遺留分」を計算します。
総体的遺留分は、相続人が配偶者や子どもの場合は遺産全体の2分の1、直系尊属のみの場合は3分の1となります。
その後、各相続人の法定相続分に基づき、個別的遺留分を算出します。
*遺留分計算の具体例
具体的な計算例を見てみましょう。
遺産総額が3000万円で、相続人が配偶者と子ども2人の場合、配偶者の法定相続分は遺産の2分の1、つまり1500万円です。
遺留分は法定相続分の半分なので、配偶者の遺留分は750万円となります。
子どもたちの法定相続分は残りの半分を等分するので、1人あたり750万円であり、遺留分は法定相続分の半分なので、子ども1人あたりの遺留分は375万円となります。
□遺留分侵害額請求の手続き
遺留分が侵害された場合、相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使できます。
1:遺留分侵害額請求の概要
遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害された相続人が遺留分相当額の支払いを請求する権利です。
2019年の法改正により、金銭による請求が主流となり、物的財産の共有という複雑な問題を回避できるようになりました。
2:請求手続きの流れ
遺留分侵害額請求のプロセスは、まず内容証明郵便で意思表示をすることから始まります。
これに対し返答がなく、話し合いでまとまらない場合は家庭裁判所に調停を申し立てられます。
調停が不成立の場合、最終的には訴訟によって解決を図ることになります。
3:遺留分侵害額請求の時効
遺留分侵害額請求には時効があることに注意しましょう。
相続開始と遺留分侵害の事実を知った日から1年以内、また事実を知らなかった場合でも相続開始から10年以内に行わなければ時効となります。
遺留分侵害額請求は複雑な手続きを踏まなければならないので、ご自身で理解を深めることに加え、期限内に請求できるように専門家に依頼することもおすすめします。
□まとめ
遺留分とは被相続人の遺言の自由と、相続人の生活保障のバランスをとった制度です。
法定相続分の半分の財産が保証されており、遺留分が侵害された場合は法的手続きを通して請求できます。
ただし、法定相続人である被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていないこと、遺留分侵害額請求には期限があることに注意しましょう。
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