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不動産の共有持分を放棄する手続き方法|税の支払いや共有者の協力が必要なことに注意
共有名義の不動産では、共有者同士でお互いの権利をけん制しあっているため、少しの意見の衝突でも大きなトラブルに発展してしまうことがあります。
こうしたトラブルを避けるためには、共有状態を解消するのがおすすめです。
今回は、数多くある共有状態の解消法のうち、最もシンプルである「持分放棄」について取り上げます。
共有者の同意や協力が得られない場合の対処法についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
不動産の共有持分を放棄する方法
実は、共有持分を放棄すること自体に、何か特殊な手順はありません。
本人が持分放棄の意思表示をするだけで、その効力は発生します。
放棄によって浮いた持分は、持分割合に応じて他の共有者に帰属します。
ただ、意思表示をしたという事実を証明するためにも、書面で残しておくことがおすすめです。
まずは口頭で自身の持分を放棄することを伝え、その後、内容証明郵便を使って再度通知しましょう。
持分放棄の意思を伝えられたら、持分移転登記に移ります。
持分移転登記は、共有者の協力が欠かせません。
単独で登記を済ませることは認められていないため、持分放棄をすることを伝えた際に協力を仰ぎましょう。
持分移転登記は、以下の書類が必要です。
・登記申請書:法務局の公式サイトからダウンロード
・登記原因証明情報:自身もしくは司法書士が作成
・登記識別情報:管轄の登記所で発行
・固定資産税評価証明書:市区町村の役所で取得
・登記権利者の住民票:共有者の住民票を取得
・登記義務者の印鑑証明:持分放棄をする本人の印鑑証明を取得
共有者には、住民票・本人確認書類・認印の3つを準備してもらいましょう。
これら全ての書類を準備したら、管轄の法務局に提出し、手続きを済ませてください。
以上で共有持分の放棄は完了です。
共有者が登記に協力してくれないときは
ここまでご紹介したように、持分放棄の登記を行うためには、他の共有者の協力が必須です。
しかし、なかには持分放棄に反対されて、協力をしてもらえない場合もあるでしょう。
そのような場合は、登記請求権(登記引取請求権)を主張して、登記引取請求訴訟を起こすという解決法があります。
これが認められれば、持分放棄をする本人単独の書類だけでも登記申請を行えます。
登記引取請求訴訟を進める手順は以下の通りです。
1.持分放棄の意思を内容証明郵便で通達
2.他の共有者の管轄の裁判所へ書類を提出
必要書類は以下の4つです。
・訴状:自身か弁護士で作成
・登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・証拠書類のコピー(持分放棄の意思表示をした内容証明郵便など)
3.裁判の開始
訴訟を起こすことについては弁護士から他の共有者へ連絡されるため、その時点で話がまとまるケースもあります。
持分を放棄する目的の多くは、共有状態の解消です。
持分を放棄する以外にも、共有状態を解消する方法は様々にあります。
裁判を起こすには手間も費用も時間もかかるため、どうしても持分放棄以外の選択肢がないときの最終手段として考えておくのがおすすめです。
持分放棄には税が発生する
持分放棄をする際に注意しておきたいのが、税が課税されることについてです。
放棄をする本人には登録免許税が必ずかかり、場合によっては共有者に贈与税が課されることもあります。
登録免許税とは、登記をする際に必要な税金です。
計算式は以下の通りです。
固定資産税評価額×2%×共有持分の割合
ここで気をつけておきたいのは、建物と土地では別々に登録免許税がかかる点です。
例えば、評価額1,000万円の建物と評価額2,000万円の土地それぞれ半分を放棄するという場合、建物の登録免許税10万円、土地の登録免許税20万円の合計30万円が必要になります。
贈与税は、放棄した共有持分の価額が、贈与税の基礎控除である110万円を超える場合に課税されます。
計算式は以下の通りです。
・土地
不動産価額×共有持分-基礎控除110万円
・建物
固定資産税評価額×共有持分-基礎控除110万円
土地の共有持分を放棄する場合、登録免許税のように固定資産税評価額ではなく、不動産の価額(路線価)を基に課税額が算出されるため注意してください。
110万円を超過した分は、法で定められている税率に応じて課税されます。
・200万円以下:10%
・300万円以下:15%|控除額10万円
・400万円以下:20%|控除額25万円
・600万円以下:30%|控除額65万円
・1000万円以下:40%|控除額125万円
不動産の評価額によっては、贈与税も非常に高額になります。
不安な場合は税理士などに相談し、脱税にならないよう注意しましょう。
まとめ
共有持分を放棄するためには、共有者の協力が必須です。
評価額によっては多額の贈与税が課税されることもあるため、慎重に話し合いを進めましょう。
協力を得られない場合でも、訴訟を起こすという形で解決に持っていくことは可能です。
ただ、お金や時間、さらには精神的なストレスもかかることになるので、最終手段として考えておくことをおすすめします。
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