-
配偶者居住権と共有持分の違いとは?登記するときの注意点も解説
夫婦の一方が亡くなったとき、場合によっては残された配偶者が住まいを失う可能性も考えられます。
連れ添った方を亡くした悲しみの中で住まいも失うという事態は、心も体も追いつかないことになるでしょう。
そのようなときに住まいを保護する制度として配偶者居住権があります。
今回は、配偶者居住権について、登記における注意点と共有持分だった場合の注意点とともに解説します。
配偶者居住権とは?
配偶者居住権とは?
配偶者居住権は、配偶者が終身にわたって住居を利用できる権利で、期間を定めることも可能です。
配偶者居住権の特徴は、夫婦の一方が亡くなった後も、残された配偶者が住宅に住み続けられることにあります。
これにより、遺産分割協議等で配偶者が住む場所を失うという事態を避けられるようになります。
成立要件と取得方法
配偶者居住権を成立させるには、「残された配偶者が亡くなった人の法律上の配偶者であること」「亡くなった人が所有していた建物に配偶者が居住していたこと」に加えて、以下3つのいずれかの方法で取得する必要があります。
・遺産分割
遺産分割協議では配偶者居住権も財産の1つとしてみなされます。
配偶者居住権も含めた上ですべての遺産を相続人でどのように分割するのかを話し合い、配偶者が配偶者居住権を得ることについて、他の相続人全員から合意を得ることで取得できます。
合意を得られなかった場合は家庭裁判所による調停、審判で分割方法が決まります。
・遺贈
被相続人の遺言書に配偶者居住権を配偶者に渡す内容が記載されてあれば取得できます。
・死因贈与
贈与者が死亡した際の財産の受け渡しについて、生前に契約を結んでおく方法で、契約書に配偶者居住権を配偶者に渡す内容が記載されてあれば取得できます。
相続財産との関係
配偶者居住権の取得は、相続財産の分配に影響を及ぼすことがあります。
居住権の設定により、配偶者が受け取ることのできる他の財産の取り分が減少する可能性があるため、これを受け入れるかどうかは、慎重に考慮する必要があります。
ただし、婚姻期間が長い場合は、配偶者居住権が遺産分割に影響を与えない場合もあります。
配偶者居住権を登記するときの注意点
配偶者居住権は成立要件をみたしていれば権利として発生していますが、第三者に対抗するためには登記が必要です。
配偶者居住権の登記は、将来の安心のための重要なステップですが、いくつかの重要な注意点があります。
1:相続トラブルへの注意
配偶者居住権を設定する際、最も重要なのは相続トラブルを避けることです。
他の相続人が不動産を売却したいと考えていた場合、他の相続人の利益に影響を及ぼす可能性があるため、家族間の事前の話し合いと合意が必要になります。
トラブルを未然に防ぐためにも、家族全員での認識の一致を図ることが重要です。
2:譲渡や売却の制限
配偶者居住権は、第三者への譲渡や売却はできません。
配偶者居住権の目的が配偶者の生活の安定であるため、商業的な利用を防ぐための措置が設定されています。
したがって、住宅を資産として活用することは限られており、所有者の同意なしに賃貸経営などもできません。
3:改築・増築・賃貸経営への制約
配偶者居住権が設定された物件の改築、増築、または賃貸経営を行う場合、必ず物件の所有者の同意が必要です。
これには、建物の価値を保持すると同時に、所有者の権利を尊重する目的があります。
また、配偶者居住権の効力は建物に限られるため、土地の使用はその所有者の意向に従う必要があります。
共有持分と配偶者居住権
不動産が共有状態の場合、誰と共有状態であるかによって配偶者居住権を取得できるかどうかが変わります。
ケースによって複雑になる可能性もあるため、慎重に判断しましょう。
1:夫婦間の共有持分の場合
夫婦が共有している不動産の場合、配偶者居住権は成立しやすいです。
ただし、夫婦の一方が亡くなった際に、残された配偶者と他の相続人(子や孫など)間で遺産分割が必要になります。
遺産分割の過程で、配偶者居住権をどう設定するかが重要な議論となります。
2:親子間の共有持分の場合
親子間で共有されている場合、配偶者居住権の取得はより複雑です。
法律上、配偶者以外の共有者がいる場合、配偶者居住権は成立しません。
そのため、配偶者の居住権を保護したい場合は、配偶者短期居住権を活用して退去までに、遺産分割の方法について話し合う必要があります。
配偶者短期居住権とは相続人などの同意なしで強制的に成立するものであり、6か月の期限が決まっています。
住まいを保障するための期間であり、この期間の間に住まいを確保する必要があるのです。
3:権利成立後の費用負担
配偶者居住権が成立した後、建物の維持にかかる費用は誰が負担するのかも重要な問題です。
法律上、固定資産税や建物の維持費は、通常、権利保持者である配偶者が負担します。
これは、配偶者居住権が使用貸借契約の一種と解釈されるためであり、借主である配偶者が費用を負担することが一般的です。
まとめ
配偶者居住権とは、残された配偶者の居住権を保護するための制度です。
ただし、遺言書や契約書がない限り、遺産分割対象の遺産の1つとしてみなされるため、他の遺産も考慮して権利を取得するか決める必要があります。
また、権利を取得したことによる費用負担や不動産を売却できないなどの制約、共有持分であるがゆえに権利を取得できないというケースもあります。
配偶者短期居住権の期間の中でメリットとデメリットを理解し、その上で権利を取得するかどうか考えることをおすすめします。
編集者
-
不動産の共有名義による「相続」「離婚」「相続後」などの親族間トラブルを抱えている方は共有持分サポートへ。当社では弁護士、司法書士、不動産鑑定士、税理士などの専門分野のスタッフが共同で問題解決のために取り組むことで、素早い対応が可能となっております。
本社を置く大阪だけではなく、全国エリアをカバーしており、これまでも遠方にお住まいのお客様の問題解決を数多く対応させていただいた実績がございますので、どなたでもお気軽にご相談下さい。
最新の投稿
- 2024年11月15日売却コラム共有持分でよくあるトラブルとは|具体例と解決方法
- 2024年10月29日売却コラム共有者が複数の不動産を売却できるのか?知っておきたい売却方法と注意点
- 2024年10月15日売却コラム共有物分割請求訴訟で絶対に知っておくべきこと|裁判で有利になるための知識
- 2024年9月29日売却コラム住宅ローン控除を夫婦それぞれで受けられるの?共有名義で賢く節税する方法とは
共有持分不動産の問題でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
-
お電話での無料相談はこちら
-
-
無料相談はこちら
-
-
-
受付時間
-
10:00~20:00【年中無休】
-